ニッチな業界の特許

先日のあるご相談は、A社からのものでした。A社は消耗品を製造しており、その消耗品を使用するためのディスペンサーのような機械をB社から購入していました。この消耗品の市場はニッチ(隙間産業)で、そのためのディスペンサーも沢山売れるような物ではありません。

さて、A社は日毎ニッチになっていく業界に独占割合が増えるという旨みを感じつつも、そのまま市場が無くなってしまうのも不安でした。そのような市場のため、ディスペンサーは割高であり、かつ、独占市場となってしまってそれに輪をかけていました。

A社はあるときに、C社からより安価なディスペンサーがあることを伝えられ、販売に興味を持ちましたが、そこで問題になってきたのがB社は特許を独占していると日頃から言っていることでした。先ずは、A社はC社に対してその点について問題ないのかと問合せたところ、C社は問題ないと考えているが、絶対とは言えないとの返事でした。

A社はC社の製品を扱いたいが、B社との長年のつきあいもあり、どうしたものか考えているという状況です。

このような話は、我々の業界ではよくありがちな問題です。正直に言って特許の問題がクリアになったとしてもA社は悩むのです。ですが、まずは特許の問題について考えてみましょう。

この業界が実は歴史が古いということであると、実のところ割りと問題は浅いかもしれません。確かにB社は色々な特許を持っているかもしれません。しかし、特許には有限の存続期間がありますから、機械の根本的なメカニズムについてはかなり昔に期限切れになっていることが多いと思われます。

従って、持っている特許については、比較的最近の技術改良の部分と考えられます。一概には言えないものの、非常に歴史が長いような機械の場合、最新の制御技術のようなものでないと特許を取れないという場合が多いようです。

ですから、機械そのもののシンプルな構造等について、特許の権利期間が残っていることはなく、特許調査をするとしても、存続期間の残っているものだけをピックアップし、C社の製品と比べてみればよいでしょう。

特に、B社もC社も扱っている機械は米国の製品というようなことであれば、米国内で権利侵害を起こしてないのでしょうから、日本国内で権利侵害を起こしていることも少ないと想像できます。B社が特許を持っているのは確かですが、C社も存在しているという状況であれば、あまり広い特許ではないと想像できます。

ただ、B社の機械の製造元が老舗で、C社の機械の製造元は新参者ということであると、状況は違います。B社の製品は使いやすく、特許も回避しにくいという場合が多々あります。そして、C社の製品は安くて特許もフリーではあるが、B社のような使い勝手の良さがないということはありそうです。

ですから、このような例外的な場合でない限り、特許の有効性という面では、C社の製品を扱っても問題ないという結果になりがちです。

一方、C社が「問題ないと考えているが、絶対とは言えない」というのは、どこの会社も100%このように言いますから、これが無責任な対応というわけではないと思います。ただし、問題ないと考えるに至った根拠をどこまで示してくれるかということが問題です。

特許事務所の人間とすれば、「C社は機械の販売にあたり、過去に特許調査を完了しており、その際には相応の調査費用をかけ、調査結果も手に入れている。もし、A社が特許調査結果を知りたい、あるいは欲しているならば、C社はそれくらいは提供する意向である。」ならば、C社はやるべきことはしたと考えていいでしょう。

「絶対とは言えない」というのは、あくまでも万が一の場合に備えての文言でしょう。

しかし、C社が、そのような特許調査をしておらず、提供できるような特許調査資料も持っておらず、「自社で調べてみたがB社に該当するような特許は無かったと判断した」という程度であれば、問題は大きいと考えた方がよいです。

ですから、「絶対とは言えない」というのは、そりゃそうだろう、危ない危ないと考えた方が良さそうです。
2007年03月29日 18:01