豆菓子の製造方法事件

豆菓子の製造方法事件

大阪地判 平成6年(ワ)第8580号 平成9年4月8日判決(控訴)

 参考文献: 判例集 平成9年(日本知的財産協会)

1、判決要旨
 被告方法が本件発明の構成要件D,Eを充足しているとは言えない。このことを前提とした原告の主張は、理由がないことになる。このため、本請求は棄却された。

2、事実及び争点
 <事実>
 (1)本件発明の構成要件
 D:シュートパイプの一方から窒素ガスを連続して吹き込むことにより、吹き   込み側開口部から窒素ガスを常にオーバーフローさせる
 E:シュートパイプの他方からシュートパイプの外周とフィルムとの間隙を通   して窒素ガスを排出させる
 (2)被告方法
 D’:シュートパイプの一方から窒素ガスを間欠的に吹き込む
 E’:シュートパイプの外周とフィルムとの間隙を通して窒素ガスを排出させ    ない
 <争点>
 被告の方法は構成要件D,Eを使用する方法であるか。

3、結論
 被告方法は構成要件D,Eを充足しているとは言えない。

4、実務上の指針
(1)判決の引用
 被告方法が原告主張の別紙第一説明書一,二記載の装置A又は装置Bを使用する同三記載の方法であると認めることはできない。これに反する原告の主張はいずれも採用することができない(したがって、被告方法は少なくとも本件発明の構成要件D及びEを充足しているとはいえず、本件発明の技術的範囲の属しないということになる。)。
(2)執筆者のコメント
 公報に記載された従来技術を基準に本件発明のポイントを考えると、少なくともシュートパイプから包装フィルムに窒素ガスを吹き込むことで、包装フィルム内の残存酸素濃度を減少させることができれば良いことになる。しかし、実際には、出願当初から「窒素ガスの連続的な吹き込み」および「間隙からの窒素ガス排出」を必須要件として含んだ方法にあえて限定している。
 この場合、出願時にはもう少し技術範囲を広く捉えても良かったのではないかと思う。むろん、拒絶理由通知に対する補正手続きを行うことで、技術範囲を狭めざるおえないケースも考えられるが、その方がかえって権利行使の仕方を考える上でも、原告が自らの所有する特許権の技術範囲をより明確に把握することができて良かったのではないだろうか。
                            以上