テーブルにおける支脚構造事件

テーブルにおける支脚構造事件

名古屋地判 平成5年(ワ)第2365号 平成9年1月27日判決(控訴)

1.判決要旨
 被告が製造したテーブルにおける支脚構造の構成は、原告の有している実用新案権の考案にかかる支脚構造を構成しないとして、原告主張の実用新案権の侵害を理由とする損害賠償請求を棄却した。

2.事実および争点
2.1 事実
(1)本件考案の構成
 ①両支脚A1,A2における外側方と内側方の脚棹a1,a2の下側が前後方向の同一方向に向くようにしてそれぞれ両脚棹a1,a2の上部1,1を左右に併設して結合する。
 ②両支脚A1,A2とも上部1が垂直で下部2が前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状の2本の脚棹a1,a2よりそれぞれ形成する。

(2)被告製品
 ①脚棹を脚棹Da1+Da2,Db1あるいはDb2にて構成している。
 ②脚棹がノ字状になっている。
2.2 争点
(1)両支脚Da1+Da2とDb1あるいはDb2とが脚棹a1,a2に該当するか。
(2)被告製品の脚棹が「前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状」に該当するか。
3.結論
(1)両支脚Da1+Da2とDb1が脚棹a1に該当しない。
(2)被告製品の脚棹が「前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状」に該当しない。
4.実務上の指針
(1)判決の引用
   ・・・・本考案においては、両支脚A1,A2がそれぞれ2本の脚棹a1,a2により形成されていなければならない・・・・願書添付図面において、それぞれ全く継ぎ目のない1本の脚棹として表示・・継ぎ目があってもよいかについて全く記載されていない。・・・・「前後方向に偏位して屈曲し垂下する形状」という意味は明らかでないから、その意味は、考案の詳細な説明と願書添付図面とにより判断するしかないというべきである。・・・したがって、本件考案においては、脚棹a1,a2の下部2,2は、右のような偏位、屈曲、垂下という形状を有しているものでなければならないというべき。・・・・したがって、本件考案における脚棹の下部の形状には、ノ字状のものを含める場合には、ノ字状のものも実施例として掲げ、あるいは考案の詳細な説明においてノ字状のものを含むことを注記してしかるべきであるが、本件考案については、考案の詳細な説明においても、願書添付図面においても、ノ字状のものを含むことを示す記載はない。・・・被告物件の支脚構造においては、脚棹Da1,Da2と脚棹Db1とをもって、前示の意味での1本の脚棹であると見ることはできない。

(2)執筆者のコメント
 本件考案の技術的な思想は、「多数のテーブルを良好に収容する」機能を実現する支脚構造を提供することであって、実用新案登録請求の範囲に記載された態様はその支脚構造の一実施例にすぎない。従って、クレーム作成時、特に、メインクレームの作成時は支脚構造が限定されるような記載を避けた方がよいと考える。すなわち、上述した機能を実現可能な構造を示唆するメインクレームを作成し、サブクレーム、考案の詳細な説明および願書添付図面にこの技術的思想を実現可能な実施態様、具体的態様を複数記載すれば良かったのではないだろうか。