製袋機の封着部離間装置事件

製袋機の封着部離間装置事件

東京地判 平成1年(ワ)第2277号 平成4年9月30日判決(控訴)

 参考文献: 判例集 平成4年(日本知的財産協会)

1,事実及び争点
 <事実>
(1)本件考案の構成
D:この回転体に複数の間挿体を放射状に配設し、
E:上記回転体を回動することにより上記束ね装置に送られた各袋体の封着部を上記各間挿体間に位置させて封着直後の各袋体の封着部を離間させるようにしたことを特徴とする

(2)被告装置の構成
d:回転体の上方に第5図に示すようなエアーガイド装置をそれぞれ設け、この回転体に放射状に複数配設される間挿体は面積比約30%の割合の均一大の多数孔を穿設した薄い金属板によってなることを特徴とし、上記複数の間挿体は第6図に示すように回転体の回転中心側の基部を回転体に軸止され、回転体と同一方向に一定範囲回動可能に形成されるように放射状に配設し、
e:右回転体を回動し、エアーガイドにより吹き落とされて束ね装置に送られた各袋体の封着部を、第7図に示すように各間挿体間に位置させて封着直後の各袋体の封着部を離間させるようにした

(3)その他
圧縮空気を袋体の端部に吹き付けて袋体を落とす構成を採用することは、昭和47年1月から公知であった

 <争点>
①被告装置は構成要件D,Eを充足するか否か
②被告装置と本件考案の
 作用効果(孔のあいた間挿体にエアーを吹き付けることによって
      ポリエチレン等を各間挿体の間に位置させることができる)
 が相違するとして技術的範囲に属しないと言えるか否か

2,結論
 被告装置は本件考案の構成要件D,Eを充足する。
 作用効果が異なるとしても設計事項の範囲をでるものではないと認められる
 従って、被告製品は本件考案の技術的範囲に属する。

3,実務上の指針
(1)判決の引用
 本件考案の構成要件Dを充足すると言うべきである。本件考案の実用新案登録請求の範囲には、「間挿体」の材質,形状を限定する記載が何も存在しない、、略、、考案の詳細な説明中に、「間挿体は本実施例の冷却板のような平板状のものだけでなく、表面に凹凸のあるもの、多数の通孔を有するもの、、略、、実施例のような多数孔を穿設した薄い金属板からなるものも含むことは明らかであり、その孔の大きさが均一か否か、孔の面積比をどの程度とするかは、本件考案の構成要件内で当事者が適宜選択できる単なる設計事項にすぎないと認められる。
 圧縮空気を袋体の端部に吹き付けて袋体を落とす構成を採用することは、昭和47年1月から公知であった、、略、、エアーガイドを利用して各袋体の封着部を吹き下げて、回転体の回動により回転する間挿体間に位置させる方法も単なる設計事項として含むものと認められる。これに対し被告離間装置は、別紙目録の、、略、、構成であるから、本件考案の構成要件Eを充足するものである。
 構成も作用効果も相違しているから、本件考案の技術的範囲に属しない旨主張するが、前認定の通り、被告離間装置は、本件考案の構成要件を全て充足するものであって、仮に被告離間装置が被告ら主張の作用効果を有するとしても、本件考案の単なる設計事項の範囲を出るものではないと認められ、被告らの右主張は採用することができない。

(2)執筆者のコメント
 本件考案は、メインクレームで袋や間挿体の材質,形状を限定していない。一方、実施形態では、考え得る多くの変形例を記載している。被告製品の構成は全て実施形態の変形例等にそのまま記載されているものであった。この結果、文言の解釈などの微妙な世界に入らずに侵害品が特定され、認められている。従って、明細書ではクレームの他にも実施形態において考え得る多くの実施形態を記載することが非常に重要になると考えられる。
 一方、構成が同一の場合に被告は作用効果が異なることを主張してくると思われるので、作用効果でも公知技術の組み合わせ等も含めて多様な記載を行うことが重要であると考えます。
                            以上