明細書

スイスアーミーナイフに触れましたらLOOPINの画面にスイスアーミーナイフの動画が掲載されていました。少し嬉しい感じです。

ただ、近年のスイスアーミーナイフに言えることですが、少々懲りすぎ、やり過ぎなところもありまして、上の動画もその極端な例かと思います。道具が多すぎるんですね。

キーホルダーとしてぶら下げたり、鞄の中に一つ入れておくと便利というのが本来の姿。道具の数が増えすぎると、立場が逆転し、鍵におまけとしてスイスアーミーナイフを付けているのか、スイスアーミーナイフにおまけとして鍵を付けてるのかを持っているのか、分からなくなってしまいます。

特許出願をするときには明細書という技術の説明書を付けなければなりません。「開示の報酬としての独占権」と考えられる明細書は、技術の裏付けとして、また、説明書として昨日しなければなりません。

しかし、技術の裏付けは必須でも、どのレベルで書く必要があるのかといえば微妙です。基準は、「当業者が実施可能に記載する」というものなのですが、当業者もピンキリです。この当業者は以前書いたかと思いますが、業界の知識は全部知っていることを前提としつつ、平均的な推察力を持つ人間のようです。

その基準についてもいろいろ話すことはあるのですが、今日はその話ではなく、心理的にどのように記載するかについて触れたいと思います。

心理的というのは適語でもないのですが、明細書を書く側は読み手を意識して、読み手の側がどのように感じるかということを調整しながら書いていることが多々あるのです。

読み手の側には、文字面からして「読みやすい、読みにくい」という感想をもたれる方、技術の細かさを気にされる方、会社としての体面を気にされる方、審査官との折衝時になんとか審査官をごまかせないかということを気にされる方などがいらっしゃいます。

我々も、あっさりと書くこともあれば、細かいことまでしっかり説明して書くこともありますし、分かっていて書かないこともあります。送りがなを敢えて変えて文脈を分かりやすくしたり、文章中に改行をどんどん入れることで各構成の範囲をはっきりさせたりすることもあります。

明細書はこうあるべきという持論を胸の奥に潜めつつも、様子を見てクライアントの希望する文章表現にすることもあります。

クライアントが自信を持って「この点がいい」と言われたことでも、実は特許的には従来例といわざるを得ない場合があります。この場合でも、クライアントの方針を大きく変更させることはできないことの方が多いですから、主をその点にしつつも、副として別の観点でフォローできるようにしておくこともあります。

事務所事務所によって書き方のスタイルがあることはあるのですが、事務所の側がそれを押し通したいという気持ちは余り無く、このスタイルがよいと思うから進めてますが、別のスタイルがよいと思われるクライアントに対してはそのようなスタイルで仕上げることが本来の姿だと思います。

明細書のできが気になるときは、じっくりと事務所の方とお話しをされて「どうしてこのような書き方になるのか」と聞かれるか、ご自身の希望があるのであれば、それを伝えてみることが大事だと思います。
2007年02月12日 22:55