特許絡みの詐欺

以前、ご相談を受けた話です。ある人から「特許権を買おうとしている。売買契約書を作って欲しい。」と依頼されました。どのような特許権なのか見せてもらったところ、自転車で平坦路を走っているときにエネルギーを蓄え、坂道でエネルギーを放出して楽に登れるようにするというものでした。

このようなことを実現するための方法はいくつか考えられ、決して実現不可能なことではありません。ただ、その方法によっては、これはどうかなと思うものもあります。

相談を受けたお話しはまさしくそのようなもので、理論上、実現不可能ではないが、その壁が厚いというものでした。まず、エネルギーを蓄える部分の素材の問題があり、重さも問題、機械的ロスも大きく、私としては「ちょっと待った」と感じました。

実際、その人には理系のスタッフもいて、そのスタッフは実現不可能とは言いきれないのだが、実現可能とも言いきれないと考えているようでした。しかし、乗り気な社長はメカ音痴で、理論上は実現できる可能性を残しつつ、実現するための障害がある場合の、その障害の大きさを理解できません。

私は自分の立場もあって、その契約書を作る仕事は受任できないと断りました。契約書を持っていってかなりの大金を支払うことになっているとのことですし、既に同額に近いほどの金額を立替払いしているという話でした。

私の説明を聞いて社長はそれでも平静を保とうとはしていましたが、顔を紅潮させているのははっきり見てとれました。

他にもエネルギーを無限に出す可能性がある技術に注力しようとしている知人がいます。これも理論上は実現できなくないのですが、実用的なエネルギーを出すための改良の余地が大きいと感じます。

その人には、私が考えた空飛ぶ円盤のエンジンの設計図を書いて説明しました。理論的には確かに飛びそうなのですが、実はトリックがあってそう思えるだけで、きちんと計算すると飛ばないことを私自身が証明できます。

むろん、私の考え方が正しくて、これらの人々の考えが間違っているとは言いきれません。特に、エネルギー利用という面で東京大学での学会に参加していたときなど、途方もない大きな考え方をする方達に面食らったこともありました。

masakoさんから大富豪のお話がありましたが、日本でもいろいろと投資話があるようで、お金持ちが全くの作り話に騙される例もニュースで紹介されたりします。博打としての投資話が多い中、技術が絡んでくると嘘なのか真なのかの判断が分かりませんし、ある意味、嘘を真と説明することなど容易です。

以前、社会科学なる学問を馬鹿にした自然科学の科学者が十分に練りに練った社会科学の理論を作り上げ、社会科学の科学者と研究を重ね、彼らが熱中したところで、それはあり得ないことを証明し、社会科学の非現実さを証明したという話を聞いたこともあります。

私自身は「単位のない科学」はあり得ないと考える人間で、社会科学は科学ではない別の学問だと思いますが、そのことは置いておいて、技術絡み、特許絡みでの詐欺が水面下で多そうです。注意して下さい。
2007年02月07日 18:59