商標の色

商標見本は、カラーでも良く、白黒でも良い。では、どちらがよいのかということになると難しい。

何事も価値観も影響してくるので、一概にどちらかを進めることができないことを前提に、説明しつつも依頼者に判断してもらうようにしている。

日本であれば、商標の出願にかかる費用は登録の費用を含めて約20万円。これで10年分。1年2万円とすると、1ヶ月1600円となる。

商標の数が少なければ、カラーと白黒と両方を取得しておいてもさほど大金ではないと考える人もいれば、一月3200円ならNHKの衛星放送視聴料よりも高いと考える人もいる。衛星放送視聴料がいくらか知りませんが・・。

ちなみに、NHKですが、CSですとCNNが300円なので、国民の義務としての税金と考えれば教育と総合で600円というのが妥当じゃないかと思うのですが・・。8チャンネル?そんなにあるの?誰が見てるの?という我が家の基準ですけど。

さて、そもそも商標の歴史は古く、カラー印刷のちらしなど滅多にない頃からあるので、社名の表示が特定の色を使っているのだとしても、以前は白黒だけで全く問題ありませんでした。

しかし、カラー印刷が手の届く範囲となってくると、カラーの出願も頻繁に行われるようになってきて、カラーか白黒かを選択しなければならなくなりました。

基本は次のように考えられています。白黒で出願したものは、色彩を着色した商標も原則として類似と考えられる。しかし、色彩を付すことによって顕著に類似性に影響を及ぼす場合はこの限りでない。

平たく言えば、非常に希な場合を除き、白黒の商標はカラーの商標まで権利が及んでいる。ごく希に色彩を付すことで印象が全く異なることとなれば、そのときは例外的に個別に考える。

一方は、白地に黒の文字、他方は白地に赤の文字、という場合に、色彩の有無で類似、非類似が変わるということはないと考えて良いと思います。しかし、よく知られている例として、一部の文字のみに色彩を付すことで、著名な商標と類似するがごとくの影響を与えることができるものがあります。

「NELSON YARN」という商標。特別変わったものでもなさそうです。しかし、「NEL」「SONY」「ARN」と分け、最初の部分を白、次の部分を赤、最後の部分を白と着色したらどうなりますか?

そう、著名な「SONY」が浮き上がってしまいます。派生的に考えれば、画数の多い非常に込み入った文字を一部は黒、SONYが浮き上がるように赤で書くといったことも可能でしょう。

一方、現実に使用しているのは赤の色彩を付したものなのですが、新聞に広告を掲載するとき、コピー機で複写するときなどを含め、世の中には必然的に白黒とならざるを得ない場合も多いのが事実です。

このため、カラーで出願したとしても、色彩を付したことで他の色彩または白黒の商標と著しく異なる印象を与えるものでない限り、他の色の商標にも権利は及びます。また、自分自身も他の色を付して使用していたとしても、本来の商標の使用と考えられます。

ですから、先のような特別な著名商標への便乗の意図がない限り、ある文字や図形の商標でカラーとするか白黒とするかでさほど影響はないといえます。最も、国によって扱いが違ったりする場合もありますので、難しいところでもあります。

ですが、文字の字体の場合と同様、自分が使っているものを出願するのが最低限の守りであることは事実ですし、自分が使っている色を確実に保護しているとはいえないとしても、白黒を選択してオールマイティさを狙うのも選択肢です。

結局、どちらがよいのかという答えにはならないので、お好きな方をとも言えますね。
2007年01月16日 20:39