商標法が改正されます。

「小売等役務」なる商品/役務を指定して出願することができるようになりました。

以前から百貨店やスーパーなどの小売業は、扱う商品の全てに商標を取得する必要がありました。例えば、三越などは扱う商品が多く、確実な保護を得ようとすればその商品全てに商標を取得する必要がありました。

小売等役務というのは、こういった場合に利用できるもので、「商品販売に際して行っている顧客に対する便益の提供(品揃え、陳列、接客サービスなどからなる総合的なサービス)」を第35類の役務として登録できるようになりました。

もう少し平たくいいますと、三越は、衣料品も扱うし、食品も扱うし、書籍や文房具も扱うし、家具も扱うし・・ということで、商標は、それらの商品が分類されている区分毎に出願しなければなりませんでした。商品だけに注目すると34分類ありますが、三越の商標を守るためには商標出願を34個しなければなりません。

しかし、今度の改正によればそれが1個で済むことになります。

グレート!と思える部分はもちろんありますが、全ての問題が解決しているわけではないので注意も必要です。

この商標登録で守られるのは百貨店などの同業者に対してです。例えば、三越は大丸との関係で商標を取られてしまうということはなくなりますし、三越とは全く関係のない業者が「三越グリーン」といった観葉植物の販売に伴う営業を営んでしまうことを防止することはできるかもしれません。

しかし、お中元やお歳暮などの贈答用品に「三越特選」といったブランドを使って販売したいときに「小売等役務」を取っているから使用して良いのだというわけではありません。

また、上記のような関係のない業者が観葉植物に「三越グリーン」といった商標出願した場合にその人が商標登録を受けられる可能性は残ります。

可能性といったのは、三越は著名な商標なので、他の人が登録を受けられる可能性は低いとはいえるからです。むろん、可能性が低いからというだけで放置しておいた結果、他人が何かの拍子に取ってしまったということは起こりえますから、責任問題の意味で放置はできないと思います。

上に書いたことがさっぱり分からないという方もみえるのではないかと思いますので、一応まとめておきますと、

1.「小売等役務」は、あくまでも新たに認められた販売に伴うサービスについて登録を受けられるので、商品を仕入れてそのまま売っているだけなら、お店のマークについて一つの商標出願で登録を受けることができる。登録を受けているのはサービスであって、商品ではない。

2.商品を扱っていて自分のマークを保護したいのであれば、やはり個々の区分毎に商標出願しないといけない。個別の商品について登録を受けていない場合、他の人がそのマークを出願して登録を受けることは可能。あなたはその商品を仕入れて自分のお店で売ることはできるが、自分がどこかに依託して商品を製造させ、それを販売しようとすると、他の人の商標権侵害となる。
2006年12月30日 18:23