特許の侵害

あなたが特許侵害の警告を受けたとする。さて、どうする。

もちろん、専門家に聞くしかないと思いますが、専門家の判断の仕方ということについてのお話しです。

特許というものがどういった体裁をしているものかもご存じない方が多いでしょうが、おおざっぱに言えば、「明細書、特許請求の範囲、図面、要約書」という書類から構成されています。

特許請求の範囲というのは権利書にあたり、ここに書いてあることが私の権利ですということになります。明細書というのは、権利書の内容がはっきり分かるようにする技術の説明書です。図面や要約書はそのままお分かりになるようなものです。

特許請求の範囲というのは権利書ですから、余分なことは書いてありません。逆にいえば、書いてあること全てが権利範囲を決めるために参酌されます。

特許請求の範囲は、例えば「周辺部にたばこを支持する切り欠きを二つ設けた円形の灰皿」といった感じで記載されています。明細書は、この灰皿をもっと具体的に説明していますし、従来の灰皿にはこのような切り欠きがないことによる不便さが合ったというような発明に至る経緯のようなことも書いてあります。

大前提として明細書は特許請求の範囲に書くことを含んでいなければなりません。明細書に書いてないことを特許請求の範囲に書くというのは、ルール違反となります。きちんと説明もしないのに、権利だけとることはけしからんということです。当然ですね。


さて、先の灰皿の例ですが、「書いてあること全てが権利範囲を決めるために参酌されます。」というのは以下のようなことを言いたいということです。

まず、「切り欠きを二つ」と記載されています。権利者は一つより二つの方が便利だからという意味だったのでしょう。でも、「いけない」コピー品が一つしか切り欠きを備えていない灰皿だったらどうなるでしょうか。

権利者は二つの方が便利という意味であって、当然、一つのものでも私の権利だと主張するかもしれませんが、「書いてあること全てが・・」というルールがありますから、二つという文言はしっかり生きていて、一つの切り欠きのものは権利外です。

一方、「いけない」コピー品が切り欠きを三つ備えた灰皿だったらどうなるでしょうか。この場合は、3個あるということは2個あることを含んでいるという解釈になります。ですから、権利範囲内です。

また、「円形の灰皿」というのも、権利者は灰皿って普通は円形だし、その方が説明も分かりやすいだろうし、四角い灰皿を除く意味なんてあるわけ無いと考えているかもしれません。しかし、先ほどと同様です。この場合も、円形でなければ権利外です。

以上が全世界の基本ルールです。しかし、米国には均等論というものがあり、以上のような場合に必ずしも、一つの切り欠き、四角い灰皿が権利外となるとは言い切れません。ただ、この均等論を使って権利を広く解釈するのは例外的な扱いなので、それに頼るような特許請求の範囲であってはなりません。
2006年12月20日 21:57