「神田うの」という商標は誰のものか。

皆さんは誰のものと考えられるでしょうか。神田うのさんとは別人が商標登録したとするなら、本人に譲るべきでしょうか?

神田うのさんという芸能人を考慮せずに「神田うの」という文字だけを見たとき、いくつか検討すべきポイントがあります。

「神田」を地名と考える。この場合、神田は都内の地名にあたり、かつ、全国津々浦々まで知り渡っているようなものだと思います。すると、「神田」を商標に入れてはいけないとは言わないものの、この部分は誰でも使えるようにすべき(悪用以外)なので、この部分を除いた商標を考えます。

すると、「うの」が商標として成立するかということになります。ひらがなで2文字というのは一応可能です。これが1文字だと無理です。本来、商標として機能しないという3条の要件でだめということになります。

ただ、「うの」ですと、UNO=1を表すということになり、もう一つ問題があります。1を表すということで、本来、商標として機能しないという3条の要件でだめということがあります。

ただ、「ワン」のように英語ですと当然ダメでしょうが、UNOのようなスパニッシュ(?)ですと、日本人にはすぐに「=1」というイメージがわかないということで該当せずとの判断になる可能性の方が若干高いかもしれません。

ちなみに、エースも同じような判断が出る可能性もあるのですが、こちらは「=1」とは判断されないようです。いくつもの登録例があります。

「うの」というのは姓とも言えます。古いですが、中日に「宇野」選手という人がいましたし、知人に「鵜野」さんという方もみえます。ただ、ありふれた氏は商標登録の対象とならず、ありふれたものかは以前ですと電話帳を使って判断していました。「うの」くらいですと「ありふれた氏」とは判断されないかと思います。

以上の検討ポイントでは一応登録できそうとは言えます、ただ、微妙なところばかりなので、最終判断は特許庁でしょうか。

一方、神田うのさんという芸能人が存在し、それが「著名な芸名」であるなら、4条1項8号に該当する可能性を検討しなければなりません。私は芸能音痴なので、自分が見た映画などに出た人しか知りません。

しかし、「神田うの」さんは私も名前は知ってます。顔も見たことがありますが、複数の写真を並べてどれが神田うの参加といわれれば間違える可能性は大です。

さて、この状態では「芸名」であることは確かです(解釈では本名も含みますから)。次に、「著名」かということになりますが、似た言葉で「周知」という言葉もあるにもかかわらず「著名」を使っているということはかなりの有名さが問われます。

芸能界のことで著名性を証明するのはどういった方法があるのか分かりませんが、出演料とか、TVへの出演頻度などで判断されるのではないかと思います。有名では足らず、超有名であることは必要です。

もし、この規定に該当するなら、別人による商標登録は拒絶理由であるはずであり、無効理由であるはずです。一旦、登録されているとしても取消審判で取り消すことができます。

ただ、4条の規定に反しているもののうち、公的観点が低い8号の場合は、登録されたときから5年以内に取消審判を請求しないと、本人が暗に許した/社会的に受け入れられたものと考えられて取り消すことはできなくなります。

ちなみに、商標はいわゆるお金儲けのためのものであり、例えばお茶の間を賑わすだけの芸能人であれば、名前、肖像等が命なので、商標登録しない手落ちはあると思います。
2006年12月16日 15:46