誤判断への対策

特許庁での審査の誤りを正すシステムはいくつかあります。

簡単な流れとしては、
審査→審判→高裁→最高裁
というものです。審判までは特許庁内のシステムですから行政の判断で、高裁から司法の判断となります。

審判は比較的よく行われます。審査の段階でも反論の機会が二度ありますが、それでもだめならもう一回り権利を狭めて審判に進み、そこで何とか通すということが多いです。

審判の費用は高いのですが、審判にいっても判断は変わらないだろうからということで最初からあきらめるということはさほどありません。審査の段階では広めの権利をとれるように頑張り、審判では少し引いて通してもらうという対応です。

実務的には商標の場合、「審判まで来てくれたとなると本当に使っていて、現実に登録する必要性が高いだろうから通してやろう」なんて雰囲気も感じます。実際、その通りなのですから。

審査では、10人に一人くらい、訳の分かんない審査官がいます。特許の場合、技術を扱いますので、文言的には含まれても自ずから起こりえないというパターンがありえます。
例えば、ボールの底に開口が空いていて、ボールには何かが入れられるとします。その何かはボールの底から落ちるのが当たり前であって、ボールの下にあるものが何かのはずみで開口からボールの中に入ってくるというようなことは自然界ではそうそう起こりません。それにもかかわらず、その開口は上から下へは通すが、下から上へは通さないという仕組みが書いてないから発明は成り立たないというような理屈をこねる人がいるわけです。

そういった審査官はいるものの、審判となると条文上は「三人の合議体」が審査することになっているので、上述した低レベルのご判断は起こらないというのが普通です。

行政との対応では、基本的には「特許になる、商標登録できる」理由を、出願人が丁寧に用意しないといけません。なぜなら、行政での手続きのルールは行政が作っていますから。

しかし、司法の段階での対応では、基本的に「行政」が拒絶しえる根拠を示すべきです。なので、姿勢を誤ると自分で自分の首を絞めかねません。すなわち、出願人が勝手にもがけばもがくほど行政の側はそれに反論すればよいだけとなり、相手が有利になってしまいます。ただ、司法が行政の側に依っているのが現実なので、舵取りは本当に注意が必要です。
2006年12月10日 11:45