商標の登録要件

商標の登録要件はご存じでしょうか?文字やマークで早い者勝ちといっても何でも登録できるわけではありません。先日の「ひよ子」のことも含めて少し解説。

まず、最初の振り分けとして、商標として機能するものかという判断があります。3条1項です。これは、商標として機能し得ないマークなどはダメですよというもの。

この例としてあげられているのは、普通名称、商品の性質効能を表すもの、極めて簡単なマークなどです。例えば、チョコレートを商品としているのにその名前として「チョコレート」としたいとします。メーカーとしては源流回帰みたいな感じで付けたいと思うかもしれません。

しかし、チョコレートに「チョコレート」を商標登録されると他の人は困りますし、何よりも他の人は自分の商品にチョコレートと書かざるを得ません。とすると、たとえ商標登録されたとしても他の人も同じようにチョコレートと書いてありますから、商標登録した人のチョコレートなのかどうかは分かりません。

商品の性質効能も同じようなもので、薬に「鎮痛剤」と名前を付けるとどうなるでしょうか。

このように3条1項は、もともと商標として機能し得ないものを5項に分けて記載してあり、6項には総まとめとなっています。1項は普通名称、2項は慣用商標、3項は性質、4項はありふれた氏名、5項は極めて簡単なマークなどとなっています。

ところが、このような一般的には商標として機能し得ないものでも、長年使用され続けてきたことで例外的に登録させるべき必要があることもあります。そのために、3条2項は例外としてそのようなものの登録を認めています。この際、例外なので条件として「世の中で周知」となっていることを求めています。

次に、3条の障壁をクリアしても、別の要因で、法律上、登録を認めない必要性があることがあります。それが4条に列記されています。

例えば公序良俗の観点で好ましくないものとして、国内海外の国旗であるとか、赤十字のマークなどがあります。特定の人の肖像もダメです。詐欺まがいになり得るような他の人の商品と混同を起こすようなものもダメですし、商品の品質の誤認を起こすようなものもダメです。

商標でも特許などと同様に早い者勝ちではあるのですが、他の法律と違って、誰かが過去に使っていたとしても、使われなくなって登録も抹消されてから一定の時間が経てば他の人に登録されることもあります。そのために、4条11項には現在登録されている他の人の商標と誤認を起こすものはダメですよと書いてあります。一旦、抹消されれば一定期間後はこの条項が適用されず、他の人も登録できるということになります。

菓子をひよこの形にした立体商標ですが、菓子の業界の中ではありふれた形状等に過ぎないとすれば、3条1項で登録できません。ただ、100年近くも使っていたとか、これだけ宣伝しているとか、全国のこことここで売っているといったことを証明すると、例外として3条2項の規定で登録が認めらます。

しかし、他の人が既に似たものを登録しているとすれば、4条の規定で登録できないことになります。

どうして意匠のようなデザインで登録しないのかと思われるかもしれませんが、意匠ですと登録から15年しか権利がありません。これからも同じ形状でずっと売っていきたいのであれば永久に更新が認められる商標として取らないと意味がないのです。
2006年11月30日 17:53