サービスマーク

なぜ、サービス業は昔は商標登録できなかったか?

そもそも商標とは商品の出所を示すもので、そのためにも勝手に他の人の商標と似ているようなものを使用させないようにする必要があった。

例えば、スーパーにチョコレートがいっぱい並んでいるとし、明治の板チョコがおいしかったからもう一度買いたいと思ったとする。しかし、その人気を知った名もないチョコメーカーが同じ商標を板チョコにつけて売ったとする。

ここで両方ともスーパーに並んだとしたら、消費者はどちらが自分の欲しかった板チョコか分からない。目印となる商標が同じなためである。これではいけないので、メーカーの手から離れたところで販売されている形ある商品を対象として商標登録する制度ができた。

一方、サービス業というと、昔はその場所に行ってサービスを受けていたのが大前提だった。銭湯を例にすれば、三丁目の角にある銭湯(「銭湯富士」、女将さん経営)はいつも清潔だし、お湯も豊富で人気があるとする。そこで、最近お客さんの少ない四丁目の銭湯(けち親父経営)が同じ「銭湯富士」ののれんを掛けたとする。

しかし、お客さんは四丁目の銭湯が三丁目の銭湯でないことは自ずから分かる。さらに、けち親父を知っていれば、「銭湯富士」というのれんだけであの女将さんがやっているとは思わない。すなわち、サービス業というのはサービスを受けに行くところなので、のれんだけが一人歩きしてお客さんが混同することはない。

なので、サービス業は商標登録で守る必要はなかった。しかし、産業の発達に伴い、サービス業も本来の経営者を離れた営業に依存することが多くなった。

JALパックという旅行業をいろいろな代理店が扱うようになると、自分が参加するツアーが本当にJALが関わっているのかどうか参加するまで分からないようでは困る。

そんなわけでサービス業での商標登録のニーズも高まり、法改正となった。
2006年11月21日 17:37