I am an inventor.

日本では、発明者をインタビューし、特許出願の準備をする。インタビューというのは発明の説明を聞き、何を権利化したいのかとか、どのようにまとめるかとかいう打ち合わせを行うことをいう。

約60分のインタビューをどのように使うかというと、私の場合は、次の通り。全く知らない技術についてのインタビューを前提とすると、最初の10分程度では、発明の説明をとにかく受け入れていく。この間、知らない技術がただただバラバラに頭の中に入っていく。このあたりではまだ理解できていない。でも、ひたすら聞いている。

10分を超えるあたりで、それまで聞いた説明が自分の既存の知識とリンクし始める。それで、発明の概略等が分かってきて頭の中で形をなす。これでだいたい20分くらい経過する。このタイミングでほぼ発明者と同じぐらいの話はできるようになる。

さらに10分ほどでは今度はその発明を自分ならどのように応用するかといったことを、発明者の説明を聞きながら考え、質問、提案といった形で表現する。このあたりで発明者が同僚と相談する感じの応答はできるようになる。

ここまでで技術は理解し、応用も考えられるようになったので、残りの30分ほどでは、特許のエキスパートとして、どうすればよい特許を取れるのか、その為には何を記載しておく必要があるのか、必要な資料はどうやって準備するのか、変形例はこういったものを入れることで権利は広くなる・・などといった打ち合わせを行なう。

自分でいうのもおこごましいがこれが、これが「打てば響く」タイプの特許事務所だと思う。どこかの特許事務所の門を叩いたときにこのような展開になればよい事務所だと思う。最初から最後まで分からないことの質問だけで終わっているようであれば、あなたが説明したことのうちの80%も反映されれば合格点とする特許事務所だと思う。

さて、以上のような展開をすると、残りの30分は、こうしたらどうかとか、こういったことは含めてよいのか、あなたの考えていることは理解した上で敢えて全く違うように見えるこのような考え方もいい権利になりそうじゃないか・・などといった提案が行われる。なので、私が発明者といってもおかしくないような発明も多々生まれている。

それが自分の仕事だと思っているのだが、依頼者である大会社は、近年、将来のことを考えてインベンターシップといって誰が発明者なのかをきちんとしておくべきと考えるようになってきているようだ。

権利を広げることの指導はお願いしているが、発明をして下さいということまでお願いしているわけではない、とも言われる。事の背景には職務発明の問題があるようだ。簡単に言えば、会社にいる間に大発明をしたが、会社からはそれに見返るような処遇をしてもらっていない。安値で特許を奪われたといって、訴訟になるということ。そのようなことが弁理士からも言われかねないと思っているのかもしれない。

今のアメリカ社会を見ていれば、そういったことは将来の日本でも起きないとはいえない。そうなれば私の名も発明者として表示されることになるのか・・。
2006年11月14日 21:44