国際特許取得

 テレビショッピングなどで「この商品は国際特許取得済み。全世界がこの商品を認めているわけです。」なんてフレーズを口にしているところを見かけることがある。おー、俺(私自身)も国際特許を取ってみたいなんて思う。そこで思う。どうやれば国際特許を取れるのかこのテレビショッピングに注文しがてら問合せてみようか。
 この世界に入って20年を少し経過したが国際特許というものを知らない。教えて欲しい。国際特許出願というものなら知っているし、年間何十件も出願はしているんですけど。これは日本にいる人なら日本の特許庁に対して複数の国を指定して出願する特許。条約加盟国は、後にこの出願人が各国に国内特許出願をしてきたときには、最初から自分の国に出願してきたものと同様に扱うという義務がある。例えば、本日2006年11月13日に日本の特許庁に国際特許出願をしたとする。すると、原則的には2009年5月13日までに外国に出願すると、2006年11月13日に特許出願したものと扱われ、審査を経てその国の国内特許となる。なので、そこでとれるのはその国の国内特許であって複数の国に効力がありそうな国際特許ではない。
 国際特許出願は世界標準の審査を受けることができるので、実際に翻訳して各国に出願した後で「この発明は既に世の中で知られているので特許にすることはできません」といった冷たい通知を受ける可能性を減らすことができる。ただ、一般的には外国に出願するための翻訳を用意する時期を遅らせるために利用されている。通常であれば、日本にしたら1年以内に外国に出願することが普通で(ある特別の利益を得られるので)、特許出願の書類を用意するには多大な翻訳費用がかかる。正直に言って私どもの事務所が請求する金額の3?4倍は当たり前。いずれ費用がかかることは承知していても、商品の販売や展開タイミングなどから、通常は出願から1年以内という時期にこういった費用をかけるべきか否かを決定しないといけないというのが辛い。どの会社も商品の販売などに目処が付けば翻訳費用など眼じゃないようなのだが(私もそんな立場になってみたい)、その目処は1年では立たないのが普通。なので、翻訳時期を遅らせることができる国際特許出願は良い選択肢。
 さて、国際特許取得の便利商品だが、買ってから調べてみて国際特許というものを取れていないと知ると腹が立ちそうなので、私がこのフレーズを聴いてその商品を買うことはないだろう。だから特段騒ぐ必要もないのだけれども、皆さんも国際特許という謳い文句自体がそもそもうさんくさいと思われた方が良いとは思う。
2006年11月12日 16:38