2008年の国際特許出願件数

国際特許出願という制度があります。これで「国際特許」を取れるのではなく、一つの出願で複数の国へ出願したのと同じことになるという制度です。出願後、30ヶ月以内に特許を取得したい国へ「移行」する手続きをすれば、実際に各国に出願した場合と同様に扱われます。

この30ヶ月の間に国際的な基準に基づいて特許に拒絶理由がありそうかなさそうかの判断が得られますから、各国での手続きをした方が良いのか否かを判断できます。各国へ出願する場合の翻訳費用を支払う前に特許になり爽快なかの目安が得られるというのが最大のメリットと言えます。

日本の通常の特許出願件数は40?50万件ほどです。これは世界的に見るとかなり数が多い方です。日本人の心配性のなせる技です。

さて、世界の国際特許出願件数が公表されました。そのまま引用させてもらいますと、

「まとめによると、出願総数は前年比2.4%増の16万3800件で、過去最高を記録した。
 国別では、1位は米国の5万3521件(前年比1.0%減)。以下、2位が日本の2万8744件(同3.6%増)、3位がドイツの1万8428件(同 3.4%増)、4位が韓国の7904件(同12.0%増)、5位がフランスの6867件(同3.6%増)となり、1?5位は前年と同じ順位となった。」

とのことです。国際特許出願は自国語で出願できるので複数の国へ出願する場合には費用面で考慮に値します。ただし、特許取得までにはやや時間がかかりますので、速攻で取りたいという場合には不向きとも言えます。

アメリカが1位で、日本は2位です。日本の件数は米国のおよそ半分です。この数字だけを見ると日本は元気がないですね。日本の企業の国際特許に対する評価を私なりの言葉で言うと次のようになります。

「大企業にとっては国際特許は特別利用しやすいというものではない。初期段階の翻訳費用を遅らせることができるというものの、特許が各国で必要か否かは出願から1年以内に決めている。普段から特許調査もしているし、必要性と、困難性は概ね理解している。

取らざるを得ないもの、是非、取っておきたいものが決まっている以上、翻訳費用を遅らせるメリットのために国際特許出願を利用する必要はない。結局は各国で手続きをすることになる以上、トータルで見れば余分に費用がかかることもデメリットといえる。

敢えてメリットがあるとすれば、通常の外国出願であれば最初の日本への出願から1年以内に出願国を決めないといけないのに対し、国際特許出願では国選びを30ヶ月の頃までのばせるので、出願国を決めかねているときにはメリットがある。」

大企業はこのように考えるので、あまり国際特許出願を使いません。むろん、「あまり使わない」といっても、結果的には上位出願件数を占めるのは大企業です。しかし、他の外国出願の件数と比較すれば相対的に国際特許出願を使う割合は低いといえます。単に順位だけから利用率が高いとは考えない方が良いと思います。

しかし、逆に言えば、こういったことができない中小企業等についてはメリットがあるわけです。

中小企業は、最初からある程度の特許調査などができていないことが多いですから、国際特許出願で得られる特許性の目安はメリットがあります。後になって翻訳の費用が無駄になるということを減らせます。

出願国の決定も、常日頃から外国での特許戦略ができていないのであれば、繰り延べられることはメリットといえます。

ところで、レポートでは、「企業別では中国の大手通信機器会社、華為技術の1737件が1位。前年より372件増加し、4位から浮上した。前年1位のパナソニックは、371件減の1729件で2位に後退。前年2位のフィリップス(オランダ)が1511件で3位に、以下トヨタ、ボッシュ(ドイツ)、シーメンス(ドイツ)、ノキア(フィンランド)、LG電子(韓国)、エリクソン(スウェーデン)、富士通の順に続いた。一方、昨年7位のクアルコム、8位のマイクロソフト、10位のモトローラは圏外となった。」とも記載しています。中国パワーを感じますね。

特許は景気には比較的左右されないものと言われてきました。たぶん、2位以下の国は来年もさほど変わらないかと思いますが、どうでしょうか。しかし、1位の華為技術の場合、来年はどうでしょう。とても興味があります。来年、同様のニュースが出たら、またコメントしてみたいと思います。
2009年01月31日 12:00