TN法

商標の類似、非類似は大変難しいと何度も書いてきました。複数の語の組み合わせになってくると、それこそいろいろな状況を総合的に考慮しなければならなくなります。

ですが、まず基本となる文言の対比で類似判断ができないと始まりません。類似の判断は、称呼、外観、意味の三つの観点で行います。外観や、意味の観点はとりあえずおいておいて、称呼について少し書いてみます。

称呼というのは、その商標を見て、どのような呼び方が生じるかという観点です。基本的には客観的に判断しますが、特別な読みを生じさせたい意図があってフリガナがついていればそれも考慮します。

また、考え得る呼び名も考慮されるので、客観的の範囲とは異なるかもしれません。この点は、商標登録された後で混同が生じる可能性がないものだけを登録しようとする姿勢で審査されており、致し方ありません。ですから、違う漢字でも、同じ読みが生じるもの同士であれば、類似と判断されます。

さて、ここまでは基本的な考え方として、「同じ読み」か否かで類似か否かを判断するというものであり、これだけならさほど問題ないのです。しかし、もともと違う読み同士のもので、一致しない場合の判断はもう一つ次元の違う世界の話となります。

たとえば、「ラポート」という商標を出願しようとしたところ「ラピート」という商標がすでに登録されていたとします。双方ともカタカナなので称呼だけの判断といえます(本当は原語を考慮して判断しますが)。

もちろん、プロのかんに頼っての判断も可能でしょうし、過去の審決例を参照して「ピ」と「ポ」の類似、その前後の文字との関係を念入りに調べて判断することも可能です。

しかし、知る人ぞ知る類似判断の手法としてTN法というものがあります。TN法自体の説明は省略しますが、ある演算とテーブルを使って類似度合いを計算で求めるのです。また、便利なことにその演算をやってくれるプログラムも存在しています。

そのプログラムはwin95の頃に作られたもので、私も以前は時々使っていました。私の経験から言わせてもらうと、類似度合いの判断はかなり信頼できます。むろん、ときどきは経験上の判断とは一致しないことがあります。

スタッフに対して「一応、TN法で類似判断してみて」と頼んだりしましたが、概ね一致するものの、本当に稀に、一致せず、「本当にTN法でそうなるの?」と問い返すようなこともありました。

TN法のプログラムはWEBで調べれば見つかりますので、興味のある人は試してみると良いと思います。特許庁では無料で商標調査できますが、そこではかなり広めに調査されるので、ピックアップされてきたものすべてが類似と判断されているわけではありません。

ですから、ピックアップされたものの中からある程度、似ていそうなものを選び出し、その上でTN法を使って類似度合いを判定すると良いと思います。
2008年06月25日 13:59