公序良俗に反すものは特許を取れません

当然といえば、当然なのですが、日本は基準を曖昧にしたい国なので、どのように適用されているのかは知っておいても損はありません。

工業所有権(今では何処も知的財産権と呼びます)についての国際的な条約はパリ条約というものがあります。このパリ条約では、「特許の対象である物の販売が国内法令上の制限を受けることを理由としては特許を拒絶してはならない」という規定があります。

パリ条約は予防的に決められたものというよりも、実際に起きていた弊害を排除するために規定されていることが多いのです。ですから、こういった理由で特許を拒絶しているという弊害を排除すべく、禁止しようとしています。

1.公序良俗に反するとは、本来の目的が公序良俗を害する
2.本来の目的はそうではないが、何人も極めて容易に公序良俗を害する利用ができる
3.使用の目的が異常であるときに、公序良俗を害するおそれがある
4.製造方法の発明に基づいて製造されたものが公序良俗を害するおそれがある
5.本来の目的はそうではないが、使用の結果公衆の衛生を害するおそれがある

以上の例でそれぞれを説明します。

1は、これこそ該当するというもので、特許は取れません。紙幣偽造機械などが該当するそうです。

2は実際にそのように使用するおそれが多分にあるときは該当するそうです。男性の精力を増強する器具などが該当するそうです。映画オースチンパワーズに出てきたものなどでしょうか?

3は基本的には該当しないとされています。

4はそのおそれがあると解釈すべきだそうです。

5ですが、実は我々の身近に多く存在しています。副作用のある医薬はこれに該当します。医薬が人命に直接関係する疾病の有効な治療薬である場合は、たとえ副作用により疾病にかかるおそれがあったとしても、その疾病が認容することができるものであれば、この条項には該当しないと判断するそうです。

ところでこういった目的があって法律で販売が規制されているものであるとき、特許を拒絶してはならないとパリ条約では規制されています。一般法は条約に反してはならないのですから、問題ありでしょうか。

しかし、便利なもので、法律は人が勝手に頭の中で作り出すものですから、それぞれの趣旨に反しないように解釈してしまいます。

パリ条約は、1)技術の進歩によって物の販売の法律が時代遅れになった場合には特許が有効になるはずだし、2)特許権者が直接に販売できなくても専売権者が販売することができるようになることを考慮して、こういった制限を課しています。

ですから、公序良俗の観点などの別の観点での規制に基づくものであれば、特許の拒絶も可能となります。
2008年05月19日 19:36