リバースエンジニアリング

シャープがサムスンを特許侵害で提訴したそうです。日本、韓国、米国で始めたとのことで、大がかりです。日本の薄型TVは高価格帯でのシェアは高いのですが、そもそも高価格帯の販売台数が多くは見込めず、比較的安価な価格帯での激戦では日本製は分が悪いというのが現状です。

日本勢からすれば安価な価格帯の業者は、先陣から学んだ技術を利用しているので開発費が安くできると考えています。先陣としての日本勢はどうしても開発費を上乗せしなければならないので分が悪いのです。そういう意味で特許が利用されるべきで、この提訴は特許の本来の意味を顕在化させているといえます。

我々は、特許をとるときは、一字一句を吟味してなるべく広い権利にしようとしています。てにをはを変えて、順番もあれこれ変えたりして、限定的にとられないようにしています。すごく努力しているのですが、翌日になると、やっぱりこっちの表現の方がいいかななんて思うことも多くなかなかこれが最高と言い切れるものではありません。

それなのに、3年もすると、あのときに何でこういう表現にしておかなかったんだろうとか、どうしてこういう技術にも適用できると説明しなかったんだろうなどと後悔することが多いです。

ただ、そのように吟味して発明のポイントというか確信だけをズバッと言い切るような表現にするのですが、最近の特許庁は、かなり具体的な表現にしないと特許にしようとしないので困ります。

さて、開発の現場では、日々、他社の特許公報を見てはこれらに引っかからないようにしています。開発がうまくいっても、その後で他社の特許が見つかり、如何に回避するかで頭を悩ませることも多々あります。

特に電子技術を応用された分野では制御が高度にIC化されていますから、特許を侵害しているのかいないのか分かりにくくなってきています。その場合にはリバースエンジニアリングといってICを解析して特許の内容を実施しているのか否かを判断する必要があり、この手間や苦労は大変なものとなります。

我々も、特許をとる際に、このリバースエンジニアリングを意識し、本来の発明の説明だけでなく、ICのようになってしまった場合でも、「外から判断できる」特許請求の範囲を作成するようにしています。いくつか書く請求項のうちの最後辺りにそれまでとは全く表現が違うような請求項を用意してあれば、そういったリバースエンジニアリングによらないでも特許侵害と断定できるようにするためのものです。
2007年12月13日 22:28