前置に異変

先日は、にわか審査官に対する愚痴とともに特許庁に対する不満のようなことを書きましたが、改善を感じることもあります。そのこともご報告を。

改善を感じるのは前置審査での対応です。前置審査というのは、「通常の審査で拒絶が確定→審判を請求→審判のために明細書を補正」したときの審査です。

通常、審判を請求したら、審判官が審査し直すのですが、前置審査となると、元の審査官が審査します。

そもそも、特許庁での審査は、二段階となっていて、裁判で言えば、地裁があって、その判決に不服なら高裁に行くような感じになっています。高裁に行ったにもかかわらず、再度地裁の裁判官が裁判し直すという現象が前置審査です。

なぜかというと、審査官は既にその出願について審査しているので技術内容を知っています。出願人は審査の段階では(やりたくても)できなかった補正(権利範囲を狭める)を、審判を請求するにあたって行い、審査段階での拒絶を克服しようとすることがあります。

この場合、審査官は内容を知っているので、その補正がされるなら拒絶は解消するという判断をすぐに行えます。一方、審判官が本来どおりに行うとするならばそのように簡単には済まず、まずは技術内容の理解から入らなければなりません。

特許庁全体としてみれば、すぐに分かる人がいるにもかかわらず、その人にやらせないで別の人が審査しなければならないのは無駄です。ですから、上述した流れに乗った場合は、審査官が再度審査し、その審査官は拒絶の理由が解消していないと判断した場合に限り、上級の審判官の元へ行くことにしています。

さて、そのような前置審査ですが、以前は、上述した趣旨にもかかわらず、審査官は首を縦に振らないことの方が普通でした。しかし、先日の審査の迅速化という圧力は審判にも同様に求められています。

そして、審判はベテランの人手を多く必要とするシステムなので、審判官の補充は難しく、従って迅速化は困難です。そうなると、入り口を塞がざるを得ず、審判の側からは「極力、前置でなんとかせ?」となってくるわけです。

その結果、前置審査では審査官が協力的になってくれるんです。そのままでは拒絶を解消できていないというのであれば、さらなる補正の機会を与えることで権利範囲を狭めさせ、拒絶が前置段階で解消されるようにしてくれます。

ちょっと親切すぎて怖いくらい。・・でも感謝。
2007年10月16日 22:49