見切りを付ける前に(2)

6.装置と、方法と、媒体というものが書いてある。装置は分かるが、方法とか媒体なんてあり得ない?
 発明品が形ある物であれば、発明のカテゴリーを装置と考えるのが普通です。でも、その動作課程に着目すると、最初にこれをして、次にこれをしてと表現できなくもないような場合に、特許事務所は方法とか、それがコンピュータで制御するものであれば媒体というカテゴリーを使います。
 装置で書いた特許請求の範囲と、方法で書いた特許請求の範囲では、特許侵害が生じるシチュエーションが異なる場合もあるのです。装置として書いておくと、お店においてある状態で特許侵害品となりますが、方法として書いておくと、買った人が実際に使用したときに初めて特許侵害品となります。装置で書くと、中身の構成がはっきり分からないと侵害と言えなくても、方法で書くと、動作の課程を見て侵害と言えることがあります。
 書ける場合はできるだけたくさんのカテゴリーで書いておく方が有利なのです。

7.断定的に書いてあるが、本当はそれだけではないはず。
 特許請求の範囲はできるだけ広く書くためのいくつかのルールがあって、それに基づいています。そのルールには、権利範囲を広いものから狭いものへと徐々に狭めていくことがあります。請求項と呼びますが、請求項1で広めに言っておいて、請求項2でそのものズバリを書くといことがあります。この場合、請求項2に記載したズバリのもの以外でも、広めに書いてある請求項1には該当するというのであれば、請求項2で断定していても問題ありません。
 一方、断定的な表現であっても核心を考えたらそれさえ含まれれば良いのだということがあります。そのような場合は断定的に言っておいても問題ありません。もう一度よく考えて断定的なことが核心をついているのか否かを考えてみると良いと思います。また、断定的であるがために核心が外れてしまうといっても、それを考慮した他の請求項が用意されている場合もあります。こういったことは特許事務所に質問するべきです。特許事務所がうまく答えられないなら分かっていないのでしょう。

8.請求項1はよいのだが、他の請求項は発明の一部しか説明していない。
 典型的な特許請求の範囲は、請求項1に大まかに発明を書き、請求項2以下でその大まかな部分を徐々にはっきりさせていくという書き方をします。例えば、請求項1で「滑り止め加工された持ち手と、鏡と、蓋とからなる手鏡」というように発明を大まかに書き、請求項2で「その持ち手は、ゴムのカバーを掛けてある手鏡」、請求項3で「そのゴムのカバーは、表面に小さな突起が多数形成されている手鏡」というように書きます。最初に大まかに滑り止め加工と書き、もう少し詳しく「ゴムのカバー」と言って限定し、さらに「ゴムのカバーには表面に小さな突起がある」と限定していくわけです。ですから、請求項1には全体を書いてあるのですが、請求項2や請求項3では一部しかいて無くても良いのです。
 全く問題がないですし、推奨される書き方です。

9.請求項2で「?特徴とする請求項1に記載の装置」と書いてあることの意味が分からない。
 請求項2は請求項1の発明があってさらにそれを限定していっていますよという意味なのですが、特許的に言えばこうなるというものです。また、請求項3であれば、「特徴とする請求項1または2に記載の装置」とも書きますし、請求項4であれば「特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の装置」と書くこともあります。請求項3については、その発明は請求項1と2の両方の場合に適用される限定的な要素ですという意味ですし、請求項4については、その発明は請求項1から3のどれにも適用される限定的な要素ですという意味です。言葉尻は多少違いますが、そういった意味です。
 これも推奨される書き方であって問題ありません。
2007年10月01日 18:12