見切りを付ける前に

特許事務所の仕事もそれはそれで奥が深いので、特許事務所のアウトプットを見て一般的な常識だけで価値判断するのもどうかと思っています。苦情を伝えることは双方にとって非常に有益なので、コミュニケーションをとってから最終的な判断をされると良いと思います。

書きかけですが、苦情が出そうなことについて少し触れてみたいと思います。

特許請求の範囲について

1.何を言っているのかよく分からない
 言葉遣いに独特なところがあります。大半は一語一句、句読点を含めて精査しています。だからといって、技術的思想を文章表現していますので、絶対に間違っていないわけではありません。
 やみくもに意味が分からないからといって文章が下手と判断するのは間違っていますが、分かりにくいと感じたところを伝えて説明を求めることがよいと思います。説明をできない場合は見切りを付けてください。

2.全然足りない
 ご自身の発明品に備わっているものが、書かれていない。しかし、こういったことはよくあります。特許侵害は、特許請求の範囲に書いてあることの全てが実施されているときにだけ、認められます。
 ご自身の発明品は実際の使用に当たって便利にするために、発明として把握したときに本来必要なもの以外のものを含んでいるのが普通です。特許侵害者は自分の製品に加えたい部分だけを真似してきます。特許請求の範囲には最低限の要素だけを書いておかないと、そのような場合に侵害と言えなくなります。

3.電子回路なのに制御手段というような手段と書いてある
 日欧では、回路と言ってしまうと、電子パーツで構成された回路だけが発明品となり、XX手段と書けば回路以外でも同等の目的を達成するものまでが発明品となります。特許侵害を判断するときに、有利です。もちろん、場合によっては回路以外で実現できそうにないこともありますが、有利な記載方法があるのに、現時点で予測がつかないというだけで、狭い記載方法で書くのはお勧めできません。

4.説明したこととは違う表現となっていて技術的な知識に疑問を持つ
 特許事務所は常に権利を広くしようと考えています。説明していただいた言葉が権利を狭く解釈されかねないのであれば、そのような言葉を使わないようにします。大半はその意味で言葉を選択していますが、本当に理解していない人がたくさんいることも確かです。このような場合はとにかく質問することが大事です。的確な返事がもらえないようであれば、分かってないのでしょう。

5.同じことが別々の請求項で書いてある。分かってないのでは?
 技術を文章で表現しますので、漏れなく正確に一致することは難しいです。通常は推敲を重ねて最適なものを考えるのですが、甲乙付けがたい場合もあります。そのような場合には「技術の多面的な表現」のために、同じことを複数の表現で書いておいて、少しでも漏れの無いようにしようとしていることがあります。
2007年09月25日 00:01