価値が生じる前の商標

先日、商標を巡ってばたばたしました。簡単に言えば、ある商標を出願し、その審査結果を待たずに新聞発表したところ、商標権者から待ったがかかったというものです。

調査不要で出願して欲しいといわれ、商品区分とマークの分け方についてだけ助言して出願はしました。そうは言っても自分で行ったという調査結果の説明におかしなところもあるので警告はしておいたのです。

その気になる商標はあったのですが、1:こちらの商標は図形や文字の複合で、相手の商標は単純な文字だけの商標であることと、2:相手の商標には無効にされるべき原因もあったものですから、一概に使用できないとも言えないものだったのです。

ただ、今回は残念ながら相手が悪かったのです。その時点では分からなかったのですが、文句を言われて調べてみたらなんと競業会社の親会社が商標権者だということでした。

協業会社とはいえ別の言い方をすれば同業者な訳で顔見知りの人もいるということで、日本流に菓子折りを持って交渉に望んだのですが、到底許諾を得られる雰囲気ではなく、新聞発表をしてしまった後だったのですが、ネーミングを変えることにしました。

ご本人は聞きたくもない話でしょうがが、この件で私が思うのは損害のないうちで良かったのじゃないかということです。

新聞発表もして各種の印刷物も用意したのだから損失甚大と思うかもしれません。しかし、我々が普段から口にするのは「商標の価値というのはその商標に化体した信用にある」ということです。

無形の信用というのは商標を使用することで生じてくるものですから、まだ使用していない商標には化体していないし、その意味で価値のない商標といえるわけです。

今の時点で文句が来なかったとして一年くらいしてから使用できなくなるということもあります。そうなったとしたら、その商標に信用が化体し、価値が生じてから使用できなくなるのでするから、その方が損失多大となってしまいます。

なので、「損害のないうちで良かった」と考えるわけです。
2007年09月21日 21:22