商標出願の改正:全指定の問題

商標を出願するときに商品分類というものを記載し、その分類の中で使用する商品を記載します。長い歴史の中で、日本は各分類の中で全部の商品を指定するということを認めてきました。これを全指定と呼ぶことがあります。

しかし、諸外国は現実に使用しているとか、まだ使用していないけれども予定の範囲内であるという商品だけを記載することを前提としています。こちらのアメリカでもそうです。

現在使用する予定がなくても全指定しておけば、他の同業者の参入を広い範囲で防止できますし、仮に他の人が使用したいと言ってきたときの交渉の種にもなるというメリットがあります。

私も、限定して書くのか、全指定するのかという選択があれば、全指定しておくことを選択してきました。

しかし、特許庁は今後全指定の記載があればその蓋然性を問うという運用を発表しました。より具体的な言い方では8つ以上書けば(商品単位ではなく、もう一回り上の概念で)その運用に従うとのことです。

運用に従うというのは、一旦、拒絶理由を通知し、事業計画書などを提出して反論するという手順を踏まないと、拒絶されてしまうということです。今後は8つ以上書いて、使用の蓋然性を示すことができなければ拒絶されます。

むろん、使用の蓋然性がある商品についてはそのような制限がないわけですから、いくつ書いても構いません。ただし、拒絶理由は来ますので、使用する予定があるという旨の反論をすることで対応しなければなりません。

そんなことを所内で話していたのですが、やはり表面的なことにとらわれてしまうスタッフもいます。

ある会社は既にフランチャイズをやっています。今度、新事業としてある分野に進出しますが、その分野でのフランチャイズの予定はありません。では、フランチャイズは問題ないでしょうか?

商標の使用で気を抜いてしまうのは、使うつもりでなく使ってしまうことがあるということです。その会社はフランチャイズもやっていてパンフレットには会社の説明として新事業のマークを付けるかもしれません。

このマークを付けたら、フランチャイズのパンフレットに使用したと言えますから(反対解釈の余地はありますが)、商標の使用となり、もしも他の人が登録商標を持っていたとしたら侵害となります。

ですから、フランチャイズで使用するつもりはなくても、使ってしまうことが簡単に予想されるので、私はそのことの注意を喚起するべきと思います。
2007年07月24日 23:00