先発明主義

長らくアメリカは先発明主義を採用してきましたが、ここに来て先願主義に変わりつつあります。先発明主義というのは、特許庁への出願の時期ではなく、発明した日が先である方が勝つという主義。先願主義というのは、発明した日の先後より、特許庁へ出願した日が早い方が勝つという主義。

先発明主義のメリットデメリットは、先願主義と相互に対立し合うのが通常です。

例えば、先発明主義は、発明を先にした人を勝たせるという意味で筋と言えば筋。しかし、先発明主義を徹底すれば発明を隠す傾向を助長してしまう。発明を長い間秘密にしておいてもデメリットがないからです。

重要な発明は言うに及ばず、小さな発明などは敢えて出願しなくてもいいじゃないかという考え方すら起こりえます。そうなると、社会全体としては技術の進歩が遅くなります。

これに対して先願主義は先に特許庁に提出しないといけないので、発明を隠してなんかいられません。積極的に出願し、それが公の場で開示される(公開)ので、社会全般に技術が知れ渡り、さらなる技術の発展が期待できます。

そうなると先願主義の方がよいことだらけのように思えますが、我先に出願をすることになり、出願しなくても良いようなものまで出願されるので、特許庁はパンクしてしまいます。また、公開される技術は玉石混合となります。

先発明主義であれば、選りすぐったものだけが出願され、公開されますから、公開公報は宝の山となって価値も高いものになります。

世界の主流は先願主義です。アメリカだけが先発明主義を採用しており、異色と言えました。最も、アメリカでも先願主義の要素を沢山取り入れています。先発明主義が色濃く残っているという部分はさほどありません。

ただ、基本が先発明主義であると、どうしても埋められない溝が残り、先発明者の側ですら冷や冷やしながら橋を渡らなければならないことがあります。

また、常に先発明者である可能性を意識して発明の発生の管理をしなければならず、その管理の負担が大きいという悲鳴もあります。

アメリカがほぼ先発明主義を排除して先願主義に移行する日が目前に迫ってきました。先願主義は管理やしやすいですが、本質的な意味で意味のあることではありません。先発明主義は本質的にはこうあるべきなものの、管理の手間が大きくなってしまいます。

いずれの側にも一長一短はあるのです。木を見て森を見ずでは、森も枯れてしまうでしょう。管理の便を優先して先願主義を採用した以上、本質的な意味で発明を大事にしないといけないのではないかと思います。
2007年05月23日 21:31