パテントトロール
今,米国ではパテントトロールという言葉が使われています。特許を買いあさり、大企業が引っかかるのを待ち、訴訟を起こして大規模な和解金を得るビジネスです。
このビジネスが良いのか否かは皆様の良識に委ねます(石原都知事は都民の良識で選択されたと、石原氏はおっしゃってました。私はこの意味の良識を意味しているのではありませんのでお間違えなく)。
パテントトロールにとっての追い風の要因ですが、次の二つがあるようです。
1.米国では半数近い特許を中小や個人が取得しており、買いあさりやすい。大企業は基本的には手放すために特許を取るわけではないことの裏返し。
2.概念的なものでもビジネスモデルとして成立しやすい傾向がある。
それぞれについてもう少し説明を加えます。
1についてですが、通常、大企業はつまらない相手に特許を売ることはありません。むろん、友好的なライセンス契約には前向きです。また、バーター契約の意義もありますので、競業相手とバーター契約をして相手の実施を許容しつつ、自分も相手の特許を実施できるようにすることはあります。
しかし、大企業は特許の有効性を売買で得られるとは考えていません。大企業での開発費を売買で賄えるということもまずありません。また、大企業はパテントトロールのことは理解していますから、自分の首を絞めるかもしれない相手を自ら肥やすようなまねはしません。
日本ではほとんどの特許、たぶん90%以上を、大企業が取得しており、売買が行われにくい土壌があります。しかし、米国では中小企業や個人が取得しており、必要とする開発費も比較的安いですから、売買には積極的です。従って、米国では特許を買いあさりやすいといえます。
2についてですが、1クリック特許、逆オークションなど、米国では金融業界に関連するものを含めたアイデアに対して特許をとりやすいと言われています。ただ、このようなアイデアにも他の技術的な発明と同様の審査基準が適用されますから、特許を取得するためのハードルは低くありません。
しかし、米国以外では絶対にとれないようなものが米国で特許になることも事実です。そして、その際に言われるのは米国での特許の対象は技術的なアイデアのみに限られないということです。
コロンブスの卵のようなもの、種を明かせばそんなもの・・というものでも、種を明かす前のものは大変すばらしいアイデアな訳で、米国ではそのようなアイデアに寛容的といった方が良いでしょうか。
いずれにしてもマイレージシステム、看板システムも特許をとれたかもしれないという国ですから、挑戦する価値は他国よりも大きいといえます。一方、ビジネスモデルというのは読んで時のごとくビジネスの仕方ですから、技術的背景がなくても実施するチャンスが大きいと言えます。
技術的背景が必要な場合は、工場設備、製造ノウハウなどが必要ですから、実施するにはやや制限が大きいのかもしれません。そのような訳で、ビジネスモデルは見方によっては引っかかりやすいともいえるでしょう。
また、企業が無防備である可能性も否定できません。未だに商標に無防備なまま商品企画や商品販売をするところもありますから。
以上のようなことから、米国ではパテントトロールがビジネスとして成り立っているようです。弁護士は本来は他の人を弁護するのが仕事でしょうが、自らの法律的知識の高さをかさにして仕事を作り出していくのでやっかいですね。そういう意味でパテントトロールというような言い方をされるのだとは思います。
2007年04月19日 09:05